破れぬ誓い



そっとアタシは土方さんの手を握った。

驚いたように顔を上げた土方さんの目は赤く充血していた。

震える息。


そんな土方さんを見てか、アタシたちを見てか白田が出て行った。



「土方さん・・。」

「はっ・・る・・・。」

「何も言わないで。」




「大丈夫・・。なにも言わないで・・。」


そっと膝立ちして土方さんの後ろに手を回し覆うように土方さんを抱いた。

土方さんはアタシの背中に手を回した。



「っく・・はる、か・・・。」

「うん・・。」

「は、るか・・・。」

「うん・・・。」

「はるか・・。」



震える声で土方さんは何度もアタシの名前を呼ぶ。

震える声でアタシは何度も返事を返す。


ぎゅぅっと土方さんの手に力が入って痛いほど抱きしめられる。




「土方さん・・・。」




アタシの目から一滴涙が落ちた。

すると関を切ったように涙が落ちる。



静かに、静かに2人の涙が落ちていった。

静かな部屋に2人の名を呼びあう声と嗚咽が小さく落ちていった。







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