破れぬ誓い


「とし・・ぞう。」

「お前に何も言わないで決めたことはすまなかった。」

「そうじゃないよ。」


ぐっと頭を下げた歳三。

アタシはその背中に手をおいた。

歳三は少し驚いたように顔を上げる。


「そうじゃないの。」


「アタシ、本当はなんとなくわかっていたの。歳三はきっと黙って見ていられないこと。」

「そうか。」

「だから、怒ってなんかいない。だけどね。」

「『だけど、アタシも連れていって』だろ。」

「そう。そうだよ。」

「駄目だ。」


歳三の言葉にアタシはムッとして食ってかかろうとした。

すると、歳三はアタシの顔の前に手を置いて黙らせる。


「つってもお前はいうことを訊かないだろう。」

「そうだよ。」

「逢ったときからそうだ。お前は俺に斬りかかってきてな。」

「違います。歳三がアタシを試したのでしょう?」

「まぁ、いい。お前を連れて行ってやる。コレがきっと最後だ。すっきり終わらせるか。」

「・・・はい。」




「けどな。」


歳三はゆらゆら動く蝋燭の火に近づく。


「生きるんだ。負けてもお前だけは。」

「歳三も一緒にでしょう?」

「馬鹿言え、俺はこの軍の大将だ。生き恥はさらせねぇ。」

「嫌、一緒に生きていきましょう。」

「・・・もし、お前が生き残ったら、幸せになれ。」

「歳三が一緒じゃないと意味がない。」

「そうだな・・・もし、生きていたら俺はお前の側にいる。」

「生き延びるんですよね。一緒に生きるんですよね。」




アタシの問いに歳三は小さく「あぁ」と答えただけだった。

じっと、ゆらめく蝋燭の火を見つめていた。

一度もアタシを見ずに。






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