破れぬ誓い



「遥。」

「歳三。」


アタシたち夫婦は互いに名を呼び合い、笑う。

不安な気持ちを隠すように。



「時間になる。」

「そう・・・だね。」



歳三がアタシを抱きしめていた手をゆっくりと離す。

突然肌が触れていた場所が冷たくなる。


ゆっくりと起き上がり、アタシたちは仕度を始める。



新撰組の羽織はないけれど、結った髪が、背負った刀が。


いつかの傷が。


アタシを奮い立たせる。



背負ったものは数知れず。

アタシが奪った命、奪われた者の家族の恨み。

見えるものだけでない、背負ったものに比例するように失ったものもある。


父、母。

お華さん、最愛の友、もう1人の父。

一時期は自分を失った。



この手に、髪に染み付いた血の匂いは消えることはない。


これらはこれからも背負っていくものだろう。



覚悟は出来た。


もし、自分の命がここで朽ち果てようとも。

愛する人を失うことになろうとも。



すっと刀を鞘から抜く。


刀は朝の鋭い光を鈍い光に変え、嬉しそうに鳴く。


横では土方さんの横顔がじっと空を見つめていた。









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