シェジャン姫の遊戯
美しきムーラン王妃は、

この夜は深いロイヤルブルー色のドレスを身に纏っていた。

聖母マリアのような
その圧倒的な気品に誰もが釘付けになった。

ベルトワはどんな些細なものでも見逃すまいと、目を凝らし、

そして、次の瞬間、落胆のあまり、玉座に崩れ落ちそうになった。

ムーラン王妃が身につけていたのは、一連のパールの首飾りだけだったからである。

王妃は静かな微笑みを湛えて、国王の前に進み出ると

「今宵はお招き頂き、ありがとう存じます。」

と艶やかな声で礼を述べ、
腰を沈めると、ゆっくりと頭を垂れて深々とお辞儀をした。

ベルトワの体に先程よりも遥かに大きな衝撃が走り、驚嘆した。

それは、喜びと興奮の衝撃だった。

一つにまとめられたムーラン王妃の後ろ髪に
紛れも無く、あの紫のバラが飾られていたからである。

ベルトワは思わず王妃に歩み寄ると、その手を取って

「ありがとう」

と呟いた。
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