シェジャン姫の遊戯
「気に入りましたか?」
そう声をかけられ、

王妃が振り向くと

アロース王国の国王、
ベルトワが微笑みながら立っていた。

「えぇ、とても素晴らしいお庭ですわ」

「少しでもあなたの心の慰めになると良いのですが。
私も配偶者を亡くす悲しみは知っていますので…」


そう言うと、ベルトワは目線を下に落とした。

17年前、ベルトワの妻キャサリン王妃は、

アントゥル王子を産み落とした後、

わずか数日でこの世を去っていた。

一瞬、物思いに沈んだベルトワだったが、
だが、すぐに顔を上げると、

近くに素晴らしい薔薇園があるのでご案内しますよ、
と言いながら、
歩き出した。
< 4 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop