天使の唄
「天使…?」
思わず俺は呟いた。
すると俺の存在に気付いたのか歌声がピタリと止んで天使が振り向いた。
あ…やっぱり普通の女の子だ。
顔を見た瞬間に思った。そして、それと同時に胸が高鳴るのを感じた。不思議な感覚…今までにない感覚な気がする。
腰まである長い黒髪、今にでも泣いてしまいそうな程に見開かれた大きな瞳。
ついつい見とれてしまう。こんな子がこの学校にいるだなんて知らなかった。
「ご、ごめんなさい…っ」
女の子は小さな声で言った。ごめんなさいって、謝るのは普通俺の方なのに。
おもしろい子だなぁ。
クスリと小さな笑い声を零してさっきから気になっていたことを問い掛ける。
「歌、好きなの?」
「あ…は、はい」
視線がさ迷う。
やっぱり聴かれたくなかったのかな?
心配になって同じように視線をさ迷わせていたけど片手に持っていたギターに気付くと彼女に視線を合わせる。
折角だし…
「俺、ギター弾けるんだ。即興で合わせてみない?」
「は、はい!」
嬉しそうな顔。よっぽど歌が好きなんだな。
ちょっと前の俺もこんな風に歌ってたっけ?
そんなことを思いながらギターを弾き始めた。
これが俺と彼女の出会いだった。