サクラリッジ
ビュネの歌は、独特のアニメ声とあいまって、それはすばらしいものだった。
宴会の後の二次会くらいでしか拍手などしない私だが、そのときは拍手をせずにはいられなかった。
驚嘆と感激をどうしても伝えたかったのだ。
伸びやかな高音と、やさしく囁くような低音に、私はすっかりやられていた。
「すごい上手だね」
私が賞賛を送ると、ビュネは照れくさそうにありがとうと返事をした。
しかし、これでは次に歌う私が非常に困る。
歌唱力の低さには定評のある私だ。
こんな凄腕を見せ付けられては、とても歌う気にはなれない。
かといって、固辞してビュネだけを歌わせるというのも気が咎めたので、仕方なく歌うことにした。
罵りや嘲りを受けることを覚悟で、私はマイクを手に取った。
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表紙・目次

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