サクラリッジ
邂逅

こんな夜は

ビュネが岡山に戻ってから半年が過ぎた。
あの時以来、私たちは顔をあわせていない。
ネット上では毎日のように話をするし、メールや電話も以前よりも回数が増えた。
だが、あってはいないのだ。
それを別段おかしなことだとも思っていなかったし、淋しく思う気持ちもなかった。
頻繁に会うことが当たり前の生活をしている恋人にしてみれば、半年も会わないなんて、きっと寂しくて悲しいことかもしれない。
あるいは遠距離恋愛をしている人にしてみれば、このあえない時間や距離をもどかしく思うのかもしれない。
だが、私たちは違った。いや、私は違ったというべきか。
私たちははじめから離れていたのだ。
故あって離れたわけでもなんでもない。
むしろ、離れている今こそが本来あるべき姿なのだ。
私には、半年が長いものではなく、むしろ短い時間であるようにすら感じていた。

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表紙・目次

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