サクラリッジ
「こちら、"しっぽ"さん」

ビュネも私もなれたもので、紹介されたらすぐに丁寧な挨拶を交わし、軽い冗談を言う。
なんて構図が出来上がっていた。
どうせ今日この日だけの間柄になるのだろうという思いがあって、私の応対は機械的なものだった。
彼女の知り合いは例外なく鬱病と診断された(あるいはそう認められた)人物ばかりで、私のような粗雑で乱暴な男とは、どうも合わないらしい。
毎日のように新しい人を紹介されるが、その後も話をした人となると、もうほとんどいない。

しっぽも、その中の一人だと思っていた。
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