サクラリッジ

時と空の間

ひとしきり泣いた後、私は家から出て夜の散歩をすることにした。

秋だか冬だか判然としない寒さの中、あてもなくそこらをうろついた。

私は田舎町に住んでいるので、夜ともなればあたりは真っ暗になる。

とはいえ、街灯もコンビニもないというような本物の田舎とは違う。

それでも、不夜城を謳うような都会とは格段に開きがあるのも事実だ。

午後十一時頃に外に出れば、人影はもう殆どない。

帰宅するサラリーマンを一人か二人見かける程度だ。

泣き腫らした目も、この時間なら誰も気づかないだろう。

もし気づかれたとしても、それを口にするものもおるまい。

私は誰かに言いわけするように、そんなことを考えていた。
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