サクラリッジ

焉道その二

♪~

ケータイの着信音に設定した、テンプテーションズのマイガールが静かな部屋に高らかに響き渡る。

ケータイを手にとって見ると、ビュネからの着信だと言う事がわかった。

私は通話ボタンを押して、耳に電話をあてた。

「ごめんね、急に電話して」

久しぶりに聞くビュネの声は、以前よりも可愛い声に聞こえた。

それに、前よりも大人びて優しげだった。

「いや、気にしなくていいよ。久しぶりだね」

「うん、ご無沙汰だったね。色々と・・・ごめん」

「いいさ、それよりも何か言いたい事があるんだろ?」

「んー、明日お葬式があるから、行くんだ」

「そっか。しっぽって、どこに住んでたの?」

「名古屋。お葬式も名古屋でやるんだよ」

「そうなのか、なんかまだ信じられないよ。身近な人が死んだって事がさ。
俺なんか、今でも騙されてるんじゃないかって、今日が四月一日なんじゃないかって思ってるもの」

「そうだね、私もそうだったよ。でも、かに玉と話していたら、認めるしかないっていうかね。そんな気持ちになった」

「もういないと思うと、あの時もっと話しておけばよかったって、思うんだよなあ」

私は、やりきれない思いでそうつぶやいた。

「うん、もっともっと話したかったよ。けど、これはしっぽが選んだことなんだよね」

ビュネの声は、かすかに震えていた。
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