おにぎり丼。
「それって案外身近な人物が犯人なんじゃないの~?」

ミートローフをフォークでつっつきながら姉は言った。

「そうかなあ」

「絶対そうよ。二時間ドラマなんかだったら、絶対身近な人が犯人なんだから」

明るく平和なキッチン。

話される内容は、ちょっと物騒だが、姉と二人の食事は、私のリラックスタイムだ。


「偽水色男……。お姉ちゃんは、誰の仕業だと思う?」

「男とは限らないと思うの」

「へ?」

「ほら。はっきり顔を見たわけじゃないでしょ」

「そうだけど」

「ホテルペンギンのおばちゃんとか……」

「えー」

「エリコちゃんのお母さん!」

「うーん」

「娘を失った悲しみで、おかしくなってしまったのかも」

「でも、偽水色男は、エリコのことに首をつっこむなっていう意味で嫌がらせをしてきたんだよ」

「そっかー」

「捜査をやめたのに、嫌がらせがやまないのが謎なんだよね」

「本当、迷惑ね」

姉は、そう言って、ミートローフの最後の一口を頬張った。


「あ。お姉ちゃん、そういえばね」

「もぐもぐ。何?」

「おいしいラーメン屋見つけたから、今度行こうよ」

「へえ。なんてとこ?」

「ラーメンピョン吉。わりと近いんだよ」

「ぜひ行ってみたいわね」


きわめて平和な会話だ。
ほんの数か月前までは、これがあたりまえだった。


偽水色男の嫌がらせさえなくなれば、またもとの平和な生活に戻れる。

問題は偽水色男のことだけだ。
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