おにぎり丼。
「一体どんな理由でしょう」

ヒトシは少し考え込んでから言った。

「別の誰かが、エリコのロッカーに隠していたということもあるな」

「別の誰か?」

「たとえば、水色男とか」

「偽水色男ですね」

「偽?」

「そうそう。水色男、偽物だったんです」

私は、ヒトシに、海戦居酒屋ドンの池乃平店長のことを話した。

「そうだったのか」

「偽水色男の正体も謎なんです」

「まだ嫌がらせの手紙は来てるのか?」

「はい。なんか日常的に来てるから、最近、あんまり気にしなくなってきちゃいました」

「僕も、車で送れるときはなるべく送っていくようにするが……心配だな」

「ありがとうございます」

「あまり、危険なことはするなよ」

「はい」

「君が心配だよ」

「……うん」



ヒトシが私を心配してくれる事が嬉しかった。


仕事があると言って、ヒトシは店に戻ってしまって、私は一人で家に帰った。


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