おにぎり丼。
私は、忠に、スパイになってからこれまでの出来事をかいつまんで、自分に都合の良いように話した。

だいたいこんな感じだ。

スパイとして入り込んで内部情報を2号店に報告した。

しかし、予想外なことながらスタッフとの間に友情が芽生えた。

由美子さんに、ヨッチーの遺書に気になる部分があると相談をうけて、謎を解明しようと思った。

調べているうちに、エリコにも話を聞きたくなり、連絡をとったら様子がおかしかった。

それから、店で本物の遺書を発見したところまで、うまい具合に話して聞かせた。


忠は、案外物分かりが良かった。

私の話し方も良かったのだが、すぐに納得してくれた。


「で、親父の遺書って?」

忠にそう言われて、はっとした。

こんなふうに話したら、遺書のことを気にするのは当然だ。

遺書は、見せたくなかった。

エリコが二郎を殺したということが書かれているからだ。

しかし、忠には知る権利があるだろう。

愛する父と恋人の、死の真相に近づく、重要な手がかりだ。


私は、結局、忠に本物の遺書を見せた。
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