おにぎり丼。
「ああ。誤解して嫌がらせして悪かったな」


「ナイフを突き付けられたときは、本気で殺されるかと思いました」

「いや、いくらオレでも、刃物なんて使わないよ」


「じゃあ、殺すつもりはなかったんですね」


「は?」


「ナイフで刺されるかと思いました」


「ナイフなんて持ってないぜ」

「え、でも初めて道で会った時……」


「初めて対面したのは、エレベーターだろ」

「え?」

「確かに、あとをつけてたけどよ、道でナイフなんて記憶にないぜ」

「水色のカツラをかぶって、私を追い掛けてたのは、忠君じゃないんですか」


「水色?なんだよそれ。コント?」

「水色男のふりをして襲ってきたのは、忠君じゃないんですか」

「は?誰だよ。水色男って。ダセー」


口振りからすると、忠は本当に、夜道でのことは記憶にないようだ。

では、夜道で水色男のふりをして私を襲った男は誰なのだろう。
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