おにぎり丼。
みんな無言でコーヒーを飲んでいる。

最初に口を開いたのは私だ。

「そういえば村松さん、家族と住んでいるんじゃありませんでしたっけ?」

「ああ。ちょっと前まではそうだったんだけどね」

「みんなどこにいったんですか」

「カニ漁船とか」

「そうだったんですか」

姉は時折、頷きながコーヒーを飲んでいる。

村松さんの家庭の事情には詳しいのかもしれない。

「コーヒーおいしいですね」

「インスタントのわりにはうまいよな」

「そうですね」

「隠し味があるんだよね」

「隠し味?」

「何だと思う?」

「バニラエッセンスとか?」

「いや、違うな」

「お姉ちゃんはわかる?」

姉はうつむいている。

「お姉ちゃん?」

姉はうつむいた態勢のまま、ソファから床に崩れ落ちてしまった。

「大丈夫!?」


「正解は……」

「え?」

「睡眠薬」

「すいみんやく……?」
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