おにぎり丼。
フライパンを持ったままの姉と、ところどころガムテープのくっついた私が、夜道を全力疾走する姿は、はたから見たら異様だっただろう。
「あ。フライパン持ってきちゃった」
息を切らせてタクシーに乗り込むと、姉は開口一番にそう言った。
「あ。レミパン」
「本当。高いやつだわ」
「村松さんこんなの使ってるんだね」
「もらっちゃおうかしら」
「そんな!」
「もとはといえば、村松さんが悪いわけだし」
「そういえば村松さん大丈夫かな」
「え?」
「打ち所悪かったら死んでるんじゃない」
「それはまずいわ」
「まずいよ」
「なんか、よく見ると血がついてるわ」
「お姉ちゃん、まずいよ」
こんな会話をしていたものだから、タクシーが止まったのは、警察署の前だった。