おにぎり丼。
光り輝く観覧車から見た横浜の街は、嘘みたいに美しかった。

「これ、一度乗ってみたかったんだ」

「私も、実は、乗るの初めてです」


観覧車が一番上を通過した時、ヒトシは静かに話しはじめた。


「2年前のこと、もちろん忘れていないよな」

「はい」

「僕が姿を消した理由は、何となくわかってるだろ?」

「……はい」

「ずっと岐阜にいたんだ」

「岐阜?」

「元カノの元カレの実家が農家でね」

「はあ」

「そこで従業員として住み込みで働いていたんだ」

「複雑な関係ですね」

「まあな」

「今はもう働いていないんですか」

「もう、岐阜も危険だからな」

「危険って?」

「岐阜の警察に、僕の居場所がばれてしまった」

「また他のところに隠れるんですか」

「そのつもりだ」

「ヒトシ……」

「なんだ」

「どうして急に私と会おうと思ったんですか」

「……遠くに行くからだ」
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