おにぎり丼。
「遠く?」

「ああ。外国だ」

「え」

「しばらく……10年単位で、君と会えなくなる。今日はお別れを言いにきた」

「そうですか……」


「君には本当に悪いことをしたと思っている」

「ヒトシ……」

「この観覧車が一周したら、お別れだ。この街をうろちょろするのは危険なんだ」

ヒトシは悲しそうに言った。

「どうして、わざわざ危険な横浜に来たんですか」

「最後に、この街を見たくてね」

ヒトシがそう言った瞬間だった。


ガコンと鈍い音をたてて、観覧車が停止した。

もう地上に着いたのかと一瞬思ったが、まだ地上までは20メートルはある。


「なんだ?」

「故障??」


地上から、拡声器を持った係員が叫んでいる。

『しばらくそのままでおまちください!てんけんさぎょうちゅうです!』


「なんだかやばそうな感じだな」

「ちょっと時間がかかりそうですね」

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