おにぎり丼。
「よくお店に来るんですか?」


「超来る。超やばい」


「昨日は来てましたか?」


「来てないねー」


しめた!

店員の返答を聞いて、私は心の中でガッツポーズを取った。


私のもともとの作戦では、パチンコ屋の店員は客の顔なんておぼえていないということを前提に考えられたものだった。

ヨッチーがパチンコ屋さんに来たことを証明できる人はいないと想定していた。

だから、店員がヨッチーを知っていると言った時はどうしようかと思ったのだが、物事は私の都合の良い方に動いている様だった。


「あ~」

何かを思い出したように店員が言う。


「え?」


「多分あそこだよ」


「あそこ?」


「臭いスナック」


「くさい?」


「線路沿いにある『ポプラン』っていうスナック。あそこのママ、体臭がきついんだ」


「昨日はそこに行くって、ヨッチー言ってたんですか?」


私はがっかりして言った。

小さなスナックにいたのなら、アリバイは崩しようにない。


「いや、本人が行くって言ってたわけじゃないんだけどね。大抵ポプランだからさ」


まだ希望はある。


私は店員に礼を言って店を出た。


< 28 / 202 >

この作品をシェア

pagetop