おにぎり丼。
「遠かったでしょう」

由美子さんはそう言いながら、紅茶をいれてくれた。

「これ、お土産です」

駅前で買ったクリスマスケーキを渡すと、由美子さんはとても喜んでくれた。

「ありがとう。母が喜ぶわ。実家でクリスマスケーキを食べるなんて何年ぶりかしら」



由美子さんは、ヨッチーが自殺してから、息子を連れて実家に戻っている。

近所の人にいろいろ詮索されたり、同情されるのが辛かったそうだ。

結局、店も辞めてしまった。

生活が落ち着いたら、フルタイムで働ける仕事を探すらしい。



「でも、嬉しいわ」

と由美子さんは言った。

「みどりちゃんが、うちの人について、こんなに考えてくれていたなんて」

「あ。はい」

私は作り笑いをした。

「今日は、遺書のこと気にして来てくれたんでしょ」

「はい……。少しでも力になれたら良いと思って」

「ありがとう」

由美子はそう言って涙ぐんだ。


ヨッチーの遺書。

私が今日由美子さんを訪ねたのは、それを見せてもらうためだった。


ヨッチーの遺書には不可解な点がいくつかあるのだと、老店長が話してくれた。

警察に話しても、事件性はないからと、取り合ってくれないらしい。

由美子さんは、それをずっと気にしているそうだ。


「ヨッチーと親しかった人に見てもらったら、何かわかるかもしれないと思って」

由美子さんはそう言って、私にクリアファイルを差し出した。


白い紙に、字がびっしりと印刷されている。


「どうぞ読んでみて下さい」

由美子さんは言った。
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