おにぎり丼。
「ん~」

ヒトシが気付いたようだ。

「何でこんなところにいるんですか!?」

「あ~。おはよう」

ヒトシは呑気に伸びをしている。

「どういうことですか!?」

「君に会いたくて」

ヒトシは決め顔でそう言った。

「え。。。」

思わず赤面してしまった。

ヒトシは自分の決め台詞に満足したように頷いている。

「待って!なんでこんなところに!?」

「いやあ。これには深い訳があってね」

「どんな訳が!?」

「僕は、飲み会の後に、無性に君に会いたくなって、ここに来たわけだよ」

「それで?」

「しかし、ドアフォンを鳴らしても、誰も出てこない。まあ、朝の5時だったからね」

「……」

「それで、僕が途方にくれていると、そこに、みどり君の姉だという人物が現われたんだ。いやあ、救世主のようだったね」

「それで?」

「訳を話すと鍵を開けて部屋に入れてくれてね」

「どうして姉のベッドの中に?」

「君のベッドに潜り込むわけにはいかないだろう。眠くて困っていたら、お姉さんが布団に入れてくれたんだ」

「本当に?」

「ええ、本当よ!」

と、そこで姉が口を挟んだ。

姉もやっと目覚めたようだ。


「夫婦喧嘩は犬も食わないって言うでしょ。喧嘩するほど仲が良い♪」

と言いながら姉はベッドを出て、洗面所に向かった。

「ぎゃ!」
私は思わずまた叫んでしまった。

姉は全裸だったのだ。

姉は眠るときは、たいてい全裸だ。

リビングにいるときは辛うじてパジャマを着ているが、自分の部屋に一歩足を踏み入れると、すぐに全部脱いでしまう。

「お姉ちゃん!恥ずかしくないの!?」

「うん」

姉はそう答えると、部屋を後にした。


「本当に、姉とは何もしてないの?」

「残念ながら」

ヒトシは答えた。
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