おにぎり丼。
私の喪服を着て、お葬式から戻ってきた姉は、ぐったりとして疲れた様子だった。
「お疲れ。どうだった?」
私が尋ねると、姉は一言、
「最悪」
とだけ言った。
シャワーを浴び、いつものように全裸になると、姉は語りだした。
「何がひどかったって、先輩の人生もひどいものだけど、におい!」
「におい?」
「先輩の体臭も、かなりのものだったんだけど、親族が全員すごいの。私、こんな臭いお葬式初めて」
「それは大変だったね。夏じゃなくて良かったよ」
「本当」
姉は納得したように頷いた。
「でね。お葬式でいろいろ聞いちゃったんだけどね」
姉は声をひそめた。
「先輩ね。キャバクラをやめて独立して、スナックを経営していたんだけど、店を始めた時の借金がきつくて、体売ってたらしいの」
「……へぇ」
「たまたま、悪い客に当たっちゃったんだろうね。可哀相に」
「やっぱり売春って危ないんだね」
「よく知らない男と、密室に二人っきりだから、どんな危ない目にあうかわかったもんじゃないわよ。先輩は危機感がなかったんだろうな」
「犯人は捕まったの?」
「それがまだらしいよ」
「ホテルの防犯カメラとかは?」
「ちゃんと撮ってなかったんだって。故障しているのに、オーナーがほったらかしにしてたらしいよ」
「つくづく運が悪いね」
「そうだねぇ」
姉はそう言ってため息をついた。