おにぎり丼。
と、言いながら、1時間後には、私は、ヨッチーの遺書の謎を解きに街へ出ていた。

しかし、謎を解くといっても、今のところ何をして良いか見当がつかない。

とりあえず、私は、ヨッチーの行きつけだったスナックに行ってみることにした。

ヨッチーと親しいママだったら、何か知っている可能性がある。

スナック ポプラン。

場所はよく憶えている。

線路添いをまっすぐ。

昼も夜もひと気の無い道だ。

時折通る電車の音が、いやにやかましい。

特急列車が轟音で走り抜ける時。

向こうから歩いて来る男と目が合った。

黒いダウンジャケットにニット帽。

「あ」

思わず声をあげてしまった。

それはよく見慣れた人物だった。

「村松さん!」

「あれ。みどりちゃん」

びっくりしたように、村松さんは言った。

「これから仕事ですか?」

「そうそう。急がないと」

村松さんはそう言って去って行った。


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