おにぎり丼。
「ヨッチー悩んでるみたいだったんだよねー。いじめとか、息子のこととか」

店員はタバコを吸いながらそう言った。

「そうなんですか」

「息子に彼女が出来て心配だとか言ってたね」

「へえ。何が心配なんですか」

「かなり年上の女らしくてね。一緒に暮らすとか言いだすから、心配してたみたい」

「息子さん、中学生でしたよね」

「そうそう。中学生で同棲は早すぎじゃん」

「それが原因で自殺したんですかねえ」

「いやぁ、それが原因ってことはなさそうだけどね。最近はヨッチーと息子の彼女の関係もうまくいってたみたいだしね」

「そうなんですか」

「まあ、いろいろあったんだろうね。借金もあったみたいだし」

「借金?」

「数百万借金があったらしいよ」

「詳しいんですね」

店員はタバコの煙を吐きながら、小さく何度か頷いた。

「そういえば、臭いスナックのママのこと知ってる?」

「え?」

「ポプラン。ヨッチー行きつけの」

「あ。さっき行ったら休みでした。何かあったんですか」

「何かあったって言うかさあ」

店員は顔をしかめて言った。

「死んだんだよ」

「え?」

「私もびっくりしちゃったんだけどさ、殺されたらしいよ」

「え!?誰にですか」

「犯人は捕まってないらしいよ。ラブホで男に刺し殺されたんだ」

「ラブホ!?」

「臭いママ、体売ってたらしいんだよね」

「そ、そうなんですか」

「うん。まあ、噂で聞いただけだから、詳しいことはわからないんだけどね」



私は店員に礼を言うと、ダッシュで家に戻った。

スナックを経営する臭いママがラブホで男に刺された話なら、聞いたことがあった。

新年早々姉が行っていたお葬式だ。

姉の体臭のきつい先輩と、ポプランのママは、おそらく同一人物だ。

ポプランのママの死と、ヨッチーの自殺がどう関係しているのかは、まだわからないが、調べてみる価値はありそうだ。

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