くちづけのその後で
あたしが戸惑っていると、西本君は何事も無かったかのように口を開いた。


「いつなら空いてます?」


「あっ、金曜なら……」


「じゃ、そこで♪」


「はい……」


あたしは、西本君に言われた通りに予約を取った。


彼は、あたしが差し出した診察券を受け取ってから、靴に履き替えた。


「じゃあ、また♪」


「あっ、はい……。お大事に」


西本君が優しい笑顔を残して帰った後、あたしの耳には外から聞こえて来る雨音が微かに響いていた。


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