くちづけのその後で
「彼氏……いますか?」


控えめな訊き方と丁寧な言葉のせいで、相手が西本君だって事をつい忘れてしまいそうになる。


「いませんけど……」


小さく答えると、彼がすごく嬉しそうに笑った。


「そっか♪」


そんな西本君の表情とは裏腹に、あたしの心は複雑だった。


彼氏はいてへん……


でも……


嘘をついた訳じゃないけど、何故か海斗の事を言えなかった。


その事が心苦しく感じて、あたしは後ろめたい気持ちになっていた。


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