くちづけのその後で
階段の前まで進んでいた西本君は、ゆっくりと振り返ってあたしを見た。


「ん?どうしたん?」


笑顔で訊いた彼を見て、あたしの鼓動がドキドキと高鳴っていく。


「朱莉さん?」


不思議そうに首を傾げて戻って来た西本君に、顔を覗き込まれながら名前を呼ばれて、不覚にも胸の奥がキュンと鳴ってしまった。


あっ……!


何か言わなアカンのに……


呼び止めたものの、次に続く言葉を考えていなかったあたしは、もちろんこの後の事も考えていなかった。


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