くちづけのその後で
今にして思えば、日に日に弱っていく祖母が亡くなるのは、きっと時間の問題だった。


だけど…


当時のあたしは、まだ子供過ぎた。


だから祖母を励ます術もわからなくて、毎日祖母に声を掛けるだけで精一杯だったんだ…。


「おばあちゃん、病院に行こ?」


祖母にそう言うだけじゃなくて、無理矢理にでも連れて行けば良かった。


祖母が亡くなった時、何度そう思って、後悔したかわからない。


葬儀の間、身寄りを失くしたあたしの心は、不安と絶望でいっぱいだった。


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