くちづけのその後で
自転車を漕ぎながら、1年前の事を思い出していた――。


「あのっ……!原田真子です。今日からよろしくお願いします!」


真子ちゃんの初出勤の日、彼女は緊張した表情であたしに言って頭を深く下げた。


「夏野朱莉です!こちらこそ、よろしくお願いします。仕事は簡単な事から覚えて貰うし、緊張しなくても大丈夫やからね」


あたしが笑顔を向けると、彼女はホッとしたように笑った。


胸元で二つに結んだ黒い髪と、笑った時に出来る笑窪(エクボ)がすごく可愛らしくて、すぐに好感を持った。


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