くちづけのその後で
保育園からの帰り道、バッグから携帯を取り出した。


《颯斗》


名前を画面に表示しただけで、胸の奥がギュッと苦しくなる。


あたしは小さく震える指で、そっと発信ボタンを押した。


携帯を耳に当てると聞き慣れた呼び出し音が耳の奥まで鳴り響いて、緊張が一気に高まった。


学校休みやし、まだ寝てるんかも……


そう思って、携帯を耳から離そうとした。


その瞬間…


「……もしもし?」


少しだけ掠れた声の颯斗が、電話に出た。


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