くちづけのその後で
「なぁ、朱莉……。俺、自惚れてもイイ?」


やっと落ち着いて顔を上げたあたしに、颯斗が眉を寄せながら小さく笑った。


「え……?」


小首を傾げると、彼はあたしの頬に触れてから優しく微笑んだ。


「朱莉はまだ俺の事好きや、って……」


え……?


そう言った颯斗が、あたしの右側の髪をゆっくりと掻き分け、指先で右耳のピアスに触れた。


「こんなもん、もうとっくに外してるかと思ってたわ……」


彼は小さく言った後、あたしをそっと抱き締めた。


< 763 / 808 >

この作品をシェア

pagetop