【短】雪の贈りもの
それから──……

私の小説の更新は止まったままだった。

雪は一向に降らない。

もちろん彼も店にはやって来ない。

けれど、なぜか更新していなくても、雪男さんからのコメントは毎日必ずあった。

最初は

『なかなか雪は降らないようですね?』

と、小説の更新を気にするようなものだったのが、気づけばお互いに雑談の方向へ進み。

『寒いですね』とか

『この間会議中に居眠りしてしまいました』とか

『最近のケーキ屋は暇です』とか。

普通の人が普通にする世間話に移り変わって行った。

けれど私には、普通とは思えなかった。

何かを誰かに伝える事がこんなにもスムーズで、互いに無理をしない距離感がとても心地良い。

雪男さんは私の秘密に気づいていないし、気づく必要もないんだ。

それは、今までどこかにいつも抱えていたコンプレックスを忘れさせてくれる、私にとってとても貴重で新鮮な時間となっていた。


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