【短】雪の贈りもの
『私は男性に想われるような人間ではないからです』

返事はまたすぐに来た。

『そんな事はないと思います。実際こうして話していて、素敵な方だなと僕は感じていますから』

『ありがとうございます。けれど、本当に、私はそんな人間ではないのです。

これ以上お話すると、雪男さんに不快な思いを与える事しかできそうにないので、また……』

そこまで書き込んで、私はパソコンを閉じた。

怖かったんだ。

せっかくできた友達──そう言うのはまだ早いかもしれないけれど。

隔たりなく会話してくれる雪男さんが、全てを知った時に自分から離れていく。

そんな気がして、怖かった。

そして、雪が降る日をただ単純に楽しみにしていた自分に苛立ちすら感じた。

会えたところで、何も変わるはずないのに。

500円を返して、彼のお願いをきく──多分、ケーキをサービスするだけの事。

私は何を期待していたんだろう。

恋なんて……私ができるはずないのに……。

したところで、実るはずのない片想い。


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