【短】雪の贈りもの
そこで文字数がいっぱいになったのか、コメントが切れていた。

『見つめる力』

──そんなもの、与えられるはずない。

私にはそんな力はないのだから。

けれど、なぜだかその言葉から、私は目が離せなくなっていた。

聴く為のものを、見つめる為のものに変えていけたら。

それが彼に力として与える事ができるなら……。

雪男さんの残してくれた言葉は、自分を否定する事しか出来なかった私にとって、希望を与えてくれるものだった。

数分して、また雪男さんからの続きのコメントが届いた。

『僕も昔、物書きを目指していた時期があって、このサイトに登録したのですが、なかなか思うように進まず、書いたものを公開せずに読み専門でいました。

けれど、雪子さんの小説を読んで、やっぱりまた書きたいなと思うようになったのです。

雪子さんがプリンの彼に見つめる力を与えたように、僕もあなたから書く力をもらいました。

それで、厚かましいお願いではあるのですが、雪子さんの小説の男性目線を書かせていただけないでしょうか?』

私は素直に嬉しく感じた。

何もできなかったはずの自分が、誰かに力を与えられる。

少なくとも雪男さんにとっては、そうなったのなら。

嬉しい……。


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