【短】雪の贈りもの
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【光】
彼女に興味以上の感情を抱き始めたのは、冬の訪れを知らせる、空からの厄介者が届いた朝だった。
いつもよりシャープな空気を感じながら、僕は立てたコートの衿に顔を埋めるようにして会社に向かって歩いていたんだ。
その時、目の前を、ひと粒の雪が通り過ぎた。
僕は
『またか……』
と、また訪れたこの季節にうんざりする気持ちで、頭の後ろにあったフードを被った。
暑さも寒さも煩わしいばかり。
常に適温の世界はないのだろうか、なんて心の中でぼやきながら。
そのまま信号待ちしていると、背後でいい歳をした男性の舌打ちが聞こえてきた。
『あぁ、この人も降り出した雪に苛立っているな』
と、チラッと視線を動かすと、その向こうに人の波に逆らう1点を見つけたんだ。
それは真っ白なコートに身を包んだ、1人の女性だった。
僕はその彼女を知っていた。
駅前のケーキ屋で働く、透明感のある女性。
たまたま外回りの帰り道に、ガラス張りの店内で微笑む彼女を見つけてから、なぜだか僕はその店の前を通るのが楽しみになっていたんだ。
その、彼女が、いる。
【光】
彼女に興味以上の感情を抱き始めたのは、冬の訪れを知らせる、空からの厄介者が届いた朝だった。
いつもよりシャープな空気を感じながら、僕は立てたコートの衿に顔を埋めるようにして会社に向かって歩いていたんだ。
その時、目の前を、ひと粒の雪が通り過ぎた。
僕は
『またか……』
と、また訪れたこの季節にうんざりする気持ちで、頭の後ろにあったフードを被った。
暑さも寒さも煩わしいばかり。
常に適温の世界はないのだろうか、なんて心の中でぼやきながら。
そのまま信号待ちしていると、背後でいい歳をした男性の舌打ちが聞こえてきた。
『あぁ、この人も降り出した雪に苛立っているな』
と、チラッと視線を動かすと、その向こうに人の波に逆らう1点を見つけたんだ。
それは真っ白なコートに身を包んだ、1人の女性だった。
僕はその彼女を知っていた。
駅前のケーキ屋で働く、透明感のある女性。
たまたま外回りの帰り道に、ガラス張りの店内で微笑む彼女を見つけてから、なぜだか僕はその店の前を通るのが楽しみになっていたんだ。
その、彼女が、いる。