【短】雪の贈りもの
けれど、それ以上に驚いた顔をしている彼女。

そして、彼女は僕を見つめたまま、手に持つプリンを落とした。

そう言えば、ケーキ屋でもルミエールを落としたっけ。

落ち着いていそうな彼女が動揺する姿は、ちょっとだけ僕に親近感を抱かせた。

そんな僕に、彼女は手を動かし何かを伝えようとする。

けれど、僕は理解してあげられない。

その時、僕はあるひとつの考えが浮かんだんだ。


手話を覚えよう。


せめて、君の誕生日に

『おめでとう』

を、きちんと伝えられるように。

そして、彼女の言葉を受け止める為に……。

天気予報が当たる確率は100%ではないけれど、僕のちょっとした賭け。

明日から太陽のマークが続く中、1週間後に迫った彼女の誕生日は、雪だるまが笑っていたのを思い出した。

君の誕生日までに、手話が少しでもできるように。

──次、雪の降るとき、会いに行きます。

君に伝える。


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