赤ずきんと狼。




「クスギ・・・今からクスギの家に行っていい?」


その日、咲から電話があった。


私はためらいもなく承諾した。


彼女が話すのはきっとあのこと。



「いやぁ~、最近、クスギの家にばっかり来てるような気がする~。


なんかクスギの家が別荘って感じ~。」



咲はいつも通り可愛らしい笑顔を見せてくれる。



「咲・・・」



ごめん、咲、私、黙っていられないよ・・・。


「分かってるよ」


咲は静かな声で言った。


「聞いたんでしょ?流本から」



私はこくりとうなずいた。



咲は困った顔で笑う。



「ほら、クスギが彼氏のことで悩んでいて、私に電話した時があったじゃん?



それで私が“流本とメールしたんだからー”って言ったとき・・・


あれ、別れのメールだったんだ。」



あのとき・・・



そうだったんだ・・・



私は私のことで精一杯で・・・。




< 162 / 171 >

この作品をシェア

pagetop