赤ずきんと狼。
「クスギ・・・今からクスギの家に行っていい?」
その日、咲から電話があった。
私はためらいもなく承諾した。
彼女が話すのはきっとあのこと。
「いやぁ~、最近、クスギの家にばっかり来てるような気がする~。
なんかクスギの家が別荘って感じ~。」
咲はいつも通り可愛らしい笑顔を見せてくれる。
「咲・・・」
ごめん、咲、私、黙っていられないよ・・・。
「分かってるよ」
咲は静かな声で言った。
「聞いたんでしょ?流本から」
私はこくりとうなずいた。
咲は困った顔で笑う。
「ほら、クスギが彼氏のことで悩んでいて、私に電話した時があったじゃん?
それで私が“流本とメールしたんだからー”って言ったとき・・・
あれ、別れのメールだったんだ。」
あのとき・・・
そうだったんだ・・・
私は私のことで精一杯で・・・。