赤ずきんと狼。
「クスギ・・・」
壁に寄り掛かる咲は静かに涙を流した。
「好きでも・・・どうにもならないことだってあるんだよ・・・
・・・これから・・・またいつか来るかわからないけど・・・
クスギにも来るはずだから・・・だから・・・」
咲は頬にこぼれた涙をふき、私の腕をつかんだ。
私もつられて目頭が熱くなる。
「だから・・・クスギはさ・・・くよくよ悩まないでよ・・・
自分が出そうとしている答えにウソをつかないで・・・」
いっつも自分のことより私のことを考えてくれる咲。
“私って言葉が乏しいよね、だからクスギのこと慰められない”
一回、彼女はそんな弱音を吐いた。
でも、彼女は私が悩んでいるとき、傍に居ることをやめなかった。
そんな彼女は自分が出した答えにウソをついていないのだろうか。
「私、頑張るよ」
赤くなった目で彼女は笑う。
「新しい恋を見つける」
初めて彼女の弱さに触れて、私は彼女の頭をなでた。
「私も・・・頑張る」
彼女のように笑えなかった。
その代わり、大粒の涙が出た。