赤ずきんと狼。
病室で私たちは彼が起きるのを待つ。
彼の身元を知らない私たちはただ彼が起きるのを待つしかなかった。
私はサトル君のベッドの横に座り、荒月は端っこに壁に寄りかかって腕をくんでいた。
「ありがとね…。」
そう礼を言っても荒月の返事は返ってこない。
その代わり「帰る」と一言呟いて動き出した。
「待って、行かないで!」
私は荒月に向かって叫んだ。
荒月は鋭い目で私を睨んだ。
サトル君も私の声で起きた。
「ここは…」
「サトル君!病院だよ!」
「結依…が…?」
「えっと荒月が…」
荒月に目を向けると荒月は私から目をそらした。