赤ずきんと狼。
「そっか…。」
咲は重い口調で言う。
咲が困っているのをお構いなしで私は言う。
「私、サトル君と別れたくないよ。」
「うん…。」
「まだ全部思い出にしたくない…。」
「うん…。」
「全部吐き捨てたい…」
「……。彼に自分の想いを伝えてないの?」
「うん…言ってない…。」
咲は強い口調で言った。
「言わなきゃダメだよ。絶対後悔する。」
「だけど…迷惑じゃ…」
「迷惑?私だって今、流本とメールしてたところなんだからね」
「…ごめん」
私が素直に謝るとフフッと電話の向こうから咲の笑い声が聞こえる。