赤ずきんと狼。
「心臓の音、速いね」
「お前もだろ」
サトル君は私よりいろいろな人と付き合ってた、
―だけど今、私を抱きしめている時に鼓動が速くなっているとなんだか嬉しい。
「大事にするから」
彼は呟く。
「つらい思いをさせた分だけ…大事にするから」
ありがとう。
心からそう思う。
体が温かくなり、涙が落ちた。
それは嬉し涙。
人気のない廊下に窓から光がさす。
私たちは長い間、抱きしめ合っていた。