恋〜彼と彼女の恋愛事情〜
「悪い・・・」
呟くように言った暁の様子がおかしい。
「何か・・・あった?」
思わず暁の腕を掴んでしまった。
「し、舜が・・・」
暁の言葉にハッとする・・・発作?舜君発作が起きた?
「暁、これから病院?」
腕は離さなかった。
「あ、ああ・・・」
顔色が悪い。
「私も」
「え・・」
「私も一緒に行く、待ってて」
返事も聞かず鞄に教科書を入れて、教室をでた。
暁は・・・待っててくれた。
「いこう」
私の声にハッとして頷くと、2人で玄関にむかった。
「なにで行くの?」
「タクシー」
「呼んだの?」
「ああ、母さんが呼んでくれたから、そろそろくるはず」
靴を履き替えて校門をでると、ちょうどタクシーが来たところだった。
病院までは車で5分くらいの距離。
暁はタクシーに乗ると行き先を告げて、後はひたすら祈るように組んだ手を額にあてていた。
「舜、次に大きい発作が出たら危ないって言われてて・・・」
呟くように言った。
「え?」
まさか。
・・・そんな・・・。
「大丈夫。・・・暁、きっと舜君は大丈夫だよ」
言いながら、背中をさすってあげることしか出来ない。
病院へ着くと、暁と一緒に舜君が入院している病室へ向かう。
3階の個室だった。
暁が入っていくのを確かめた私は病室へは入らなかった。
勝手についてきてしまっただけで・・・・それにもう彼女でもない。
あの時は暁の表情がとても辛そうだったから、咄嗟に着いてきちゃったけど・・・よく考えたら邪魔・・・だよね。
だけど、放っておけなかったんだよ。
舜君のことが気になって帰ることが出来なかった私は、待合室の椅子に座って今までのことを思い出していた。