恋〜彼と彼女の恋愛事情〜
「あ、いえ、そんなことは・・・」
この店で会うだけの関係で、仲が良いってほどではない。
「正直、早瀬君をこのお店に連れてきたときは驚いたんだけどね。・・・あんなに楽しそうな香奈枝を見るのは久しぶりだったから」
お店の準備をしながら話してくれた。
「そうですか」
「これからも、仲良くしてやって欲しい」
「あ、はい。俺でよかったら・・・」
その時、携帯がなる。
香奈枝からだ。
<ごめん。今日は行けなくなっちゃった>
「悠人さん、香奈枝が来られなくなったって、メールが・・・」
俺の言葉をきくと
「まずいな・・・」
何か考えているように呟いた。
つかまったとか、まずいとか・・・いったい何なんだろう。
「あの、香奈枝さんに何かあったんですか?」
気になる。
「え?ああ・・・ちょっとね」
それだけで、詳しくは話してくれようとしない。
何か訳ありなのは俺でも分かる・・・。
だけど、それ以上の事を聞いたところで何か出来るわけでもなさそうだし。
とりあえず、コーラを飲んでお金を払おうとしたら、
「今日はおれのおごり」
とお金はとられなかった。
店を出て階段を下りると外は相変わらずの土砂降りだ。
持ってきた傘を開いて路地から大通りに出ようとしたとき
ん?
雨の中傘も差さずに歩いている女が見えた・・・・。
香奈枝?
香奈枝は俺のことが目に入っていない様子で、悠人さんのお店に向かっているようだった。
思わず追いかけた。
階段の入り口で香奈枝の腕を引っ張る。
「おい!」
振り返った香奈枝の顔は・・・・・腫れていた。
なんだよ?
何があったんだ?