恋〜彼と彼女の恋愛事情〜
「そんなの心配するなよ」
「でも・・・」
苦労してきたから、そういうところが気になるんだな。
「俺が食わせてやれるよ」
「へ?・・・なんで?」
「あ?俺会社任されてるから、お給料貰ってんの。・・・表向きは違う人が代表取締役をしているけど、会社を動かしてるのは俺」
「へぇ!すごいね!」
「だから、遠慮しないで頼れよ」
「う、うん・・・」
「ま、秘書になったらバリバリ働いて返してもらうから」
「うん・・・ありがとう」
「今日から俺の家にいくぞ」
「え?でも、荷物とか・・・」
「そんなの明日取り行けよ。今帰ってもまた嫌な思いするだけだろ?・・・明日学校休め。運転手一人つけるから、昼間のうちに家に戻って荷物まとめて来い」
「・・・・う、うん」
その時
「俺もそのほうが言いと思う」
お店のドアが開いて悠人さんが戻ってきた。
「「悠人さん」」
「早瀬君の言葉に甘えたほうがいい。・・・香奈枝お前の親父はダメだ。今日という今日は心底あきれさせられた」
そう言いながら悠人さんは買ってきたものを冷蔵庫にしまった。
あ、買い物があったのは本当だったんだ。
「早瀬君悪いね。本当なら俺が預かってあげたいんだけど、夜、店に殴りこんできたり、俺のいない間に香奈枝を連れて行かれちゃったりするから、家には置いてあげられなくて」
なるほど。そんな理由があったのか。
「一度俺が香奈枝を養女にするって言ったんだけどね、頑なに断られた。家にもかくまってみたんだけど、見つけられて連れ戻されると暴行がひどくなるから・・・・どうにも出来なかったんだけど・・・早瀬君のところならあいつも簡単に手は出せないと思うから・・・どうか香奈枝をよろしくお願いします」
そう言って、深々と高校生の俺に頭を下げる。
「あ、やめてください」
「いや、これは親代わりの俺のけじめだから」
これは真剣に答えなければ、
「わかりました。大切に預からせてもらいます」
俺も悠人さんに頭を下げる。
「「よし!」」
頭を下げたあと2人で顔を見合わせて微笑んだ。
俺、悠人さん好き。温かい人だから。