恋〜彼と彼女の恋愛事情〜
香奈枝
「あ~、クラス別々だ~。いいなぁ。未那と純一緒か~」
「ま、お昼とか一緒に食べられるからいいじゃない」
未那は笑顔で私の肩をポンと叩く。
「残念。3人一緒が良かったね」
優しい言葉を掛けてくれるのは純。
高校2年生のときのクラス発表で私が7組、未那と純が1組と離れてしまった。
私にはいろんな噂が立っている。
『誰とでも寝る女』
『毎日しないとだめなんだって』
『病気を持ってるらしいよ』
『来るもの拒まずみたいだから』
『人のものだと欲しくなるんだって』
・・・いったい私はどんな女なのだろう。
だって、1回も・・・その・・・した事ないんですけどね・・・。
私の体には無数のあざと傷がある。
父親が酒乱で暴行を受けているから。
小さい頃から何故か私だけが、嫌われていた。
母親は姉だけを可愛がる。
だからだろうか、私は人の顔色を見て育つようになった。
笑いたくもないのに笑い、泣くと「うっとうしい」と言われ、親の機嫌を損なわないように毎日を過ごしていた。
褒められたくて勉強も頑張った。
だけど、姉より良い点数をとると何故か怒られる。
どうしてなのかが分からない。
中学1年の時に親が離婚して母親は姉だけを連れて出て行ってしまった。
私は捨てられたのだ。
父親はそれから私を殴るようになった。
はじめは泣いたしわめいたし・・・でも誰も助けてはくれなかった。
学校も行かず、家も出ようと思っていたとき、悠人さんが助けてくれた。
お店に連れて行ってくれたり、買い物にも一緒にいってくれたりして。
私が道をはずさなかったのは悠人さんがいたからだ。
「香奈枝、辛いだろうが高校はでなさい」
悠人さんに言われて、そこそこ頭の良かった私は進学校へ入学した。
そこで出会ったのが未那と純だった。
2人は私の噂など全く気にしない。
「本当の香奈枝を知ってるのは私たちだけだけど・・・それでいいんじゃない?」
未那の言葉がとても嬉しかった。