恋〜彼と彼女の恋愛事情〜


殴られた夜の次の日は、学校を休んで家に荷物を取りに行った。

父親は仕事でいない。

私の荷物といっても、学校のものと着替えと歯ブラシドライヤーなど、生活に最小限のものしかないから鞄ひとつにまとまってしまう。

いらないものはゴミ袋に詰めて、ごみステーションまで持っていく。

「これで終わり・・・」

今夜 悠人さんが、私のことを父親に話をしてくれることになってる。

もちろん居場所は教えない。

教えても入ることすら出来ないと思うし。

表で騒いだら、即警察行きだ。

準備が終わると、待ってくれている運転手さんのところへ急ぐ。

「お、お待たせしました」

頭を下げると

「いえいえ、そんなにお待ちしておりませんよ?」

と、クスクス笑った。


-----そうして始まった早瀬家での生活。

早瀬君には執事がいる。

そのほかにメイドさんが3人。

専属の料理長までいるから驚きだ。

本当にお坊ちゃまなんだな・・・。

改めて思う。

一緒にいると、私とは正反対の生活にただただ驚くばかりだ。

しかも、早瀬君は忙しい。

朝から寝るまでスケジュールがびっしり。

これが『親が与えたハードル』ですか?


・・・・高すぎじゃ、ありませんかね?

・・・秘書になるのムリなんじゃないだろうか・・・。


学校では陸上部に入っていて、頑張っているし・・・人間じゃないわ。

私を女妖怪って言ったけど、あなたも立派に妖怪ですよ?


早瀬君の両親は今は海外にいるらしく、滅多に帰ってこないと言っていた。

メールでは毎日のようにやりとりはしているらしいし、私のことも報告しておいたからって言われたけど・・・・そういえば早瀬君のご両親の了解取ってないんじゃ・・・。

「秘書になることも言っておいた。・・・ビックリしてたけど喜んでたぜ?」

にやりと笑う。

・・・悪い顔になってますよ?

親子のことには首を突っ込まないようにしよう。・・・きっと早瀬君の中に親に対しての黒いものがあるに違いない・・・あの笑顔はそうに違いない・・・。





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