恋〜彼と彼女の恋愛事情〜
少し考えた後・・・
「早瀬君、私お父さんに会って言いたいことがあるの。・・・会いに行ってもいい?」
俺の目をまっすぐ見る。
「わかった・・・その代わり俺も一緒に行く」
「うん」
俺たちは急いで駅まで送ってもらう。
新幹線乗り場に行って、父親の姿を懸命に探す。
彼は喫煙所でタバコを吸っていた。
「お、おとうさん!」
香奈枝の声に気が付いてビックリしている。
「香奈枝・・・・」
香奈枝の父親は吸っていたタバコを消して香奈枝の前に立った。
「あの、私言いたいことがあって」
「会うのも最後だろ・・・文句くらい聞いてやるよ」
「お父さん・・・」
「俺はもうお父さんじゃないはずだけど?」
「・・あ、あの・・・い、今まで育ててくれて・・・ありがとう」
「え・・・?」
香奈枝?何でお礼なんか・・・。
「本当の子供じゃなくて、ごめんね」
目にいっぱい涙を溜めて、謝っている。
「何言って・・・香奈枝のせいじゃないだろ・・・」
父親も戸惑っているのがわかる。
「うん、でも・・・育てるの・・・大変だったと思って・・・」
「馬鹿だな」
優しい顔で、香奈枝の頭をくしゃくしゃとする。
「あ、そうだ・・・これ・・・」
香奈枝はこの前買ったハンカチを取り出す。
「お父さん、誕生日だったから・・・」
そっと香奈枝からハンカチを受け取ると
「ありがとう」
と、笑顔で香奈枝を見る。
それから俺を見る。
「早瀬君。・・・香奈枝を・・・よろしくお願いします」
深々と頭を下げた。
「はい。大切に預からせていただきます」
俺も頭を下げる。
香奈枝のお父さんは新幹線に乗り込んだ。