恋〜彼と彼女の恋愛事情〜


「翔太は、『いたよ』って答えてくれた。美容師の私に、建築家の翔太。・・・ああ、そうなんだ、翔太はずっと先の未来を考えていてくれたんだって、それなのに私は目先の未来ばっかり気にして・・・初めて気が付いた・・・もう遅いけど・・・」

「未那・・・」

「この別れも私のことを考えてくれたことなんだろうって・・・思って・・・最後の翔太の我侭くらい・・・聞いて・・あげ・・・なくちゃ・・・って思って・・・・」

それだけ言うと未那はその場に座り込んでしまった。

「・・・別れたくない・・翔太がいないなんて・・・嫌だよ・・・」

「未那」

「純・・・・どうしたらいいの?・・・純・・・翔太が・・・翔太が・・・離れて行っちゃった・・・」

純は未那を精一杯抱きしめた。

「私の側から・・・いなくなっちゃった・・・いなくなっちゃったよぉ・・・・」

未那は子供のように声を上げて泣いた。

純と香奈枝はそんな未那を抱きしめることしか出来なかった。





暁、洸一、聡はそっと部屋を出た。

「・・・辛いな・・・」

洸一がつぶやく。

「・・・・ああ」

暁は自分が何もしてやれないことが悔しかった。

「・・・う・・・っ・・・」

聡は・・・・・号泣していた・・・。

「・・・あっちの部屋で未那が落ち着くの待とうか・・・」

洸一に言われて暁と聡は客間に向かった。

そこからは玄関が見えるから、未那たちが出てくれば分かるようになっていた。


ソファーに3人は座った。

「・・どうしてこんなことに・・・なるかな・・・」

暁がため息を漏らす。

「・・・翔太は、不器用だからな・・・俺や暁と違って」

・・・聡は?・・・。

「俺だったら、絶対に純を離さないけどな・・・」

「おう、俺もそうだ。・・・香奈枝と別れるなんて考えらんねぇ・・・そこが俺たちと違うところだろ・・・」

・・・あの・・聡は?・・・。

「・・・聡・・・泣きすぎだ・・・」

まだ泣いている・・・。

「・・・だって・・・あんな未那初めて見た・・・」

「・・・そうだな・・・それだけ好きだったんだろうよ」









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