恋〜彼と彼女の恋愛事情〜
電車のドアが閉まる。
「またね」
電車の中から未那は手を振る。
皆も笑顔で手を振った。
電車が走りだしたその時、未那はホームの柱の影に隠れている人陰を見つける。
「・・・翔太!!」
思わず窓に顔を近づける・・・。
翔太は未那の方を見て微笑んで手を振っていた。
未那は目に涙を浮かべて手を振り返した。
『頑張れ、未那』
そう言っているように聞こえた。
「翔太・・・ありがとう。頑張るね」
未那はポツリとつぶやいて、電車のシートに腰を下ろした。
「行っちゃったね・・・」
寂しそうにつぶやく純。
「そうだな」
暁は純の頭を撫でる。
「行くか」
洸一の一言で帰ろうと振り返ると
「翔太!?」
翔太が立っていた。
「よお。俺も見送りにきた」
「見送りって・・・もう行っちゃったぞ?」
慌てて暁が言うと、
「ああ、最後に見れたから・・・」
と微笑んだ。
「そうか」
暁は翔太の背中に手を当て
「行くか」
と、促す。
それを合図に皆駅の出口へと向かう。
いつまでも高校生ではいられなくて・・・皆進路が決まるとそれぞれに新しい場所へと旅立って行く。
それは大人になるということで、皆同じように与えられる分かれ道だ。
新しい扉を開くのは期待と不安が入り混じり・・・時々落ち込んでしまうこともあるけれど、そんなときは愚痴でも吐こうよ。
話を聞いてくれる家族や友達がいるって素敵な事。
人との出会いはその人の宝物。
いろんな人から元気をもらって、また前を向いて進んでいこう。
自分の未来は自分の手の中にあるから。
未来を信じて・・・・。
~完~